研究室では、論文紹介がある 。教官や学生が興味を抱くような、上手な論文紹介はどうすればできるのだろう?
炎上などといった失敗をしないための、論文紹介の方法について下記にピレンが記しました。
宜しければご参考ください。
論文紹介の方法
良い論文を選ぶ
論文紹介は論文選びが最も重要です。
どんなに上手い発表をしても、どんなにデザインの良いわかりやすいスライドを作ったとしても、選んだ論文があまりにも的外れだと、良い論文紹介はできないでしょう。
論文紹介の趣旨に合った論文を選ぶ
最初にですが、これは絶対です。研究室であっても企業であっても、論文紹介は何のために行われているか確認してください。
ある程度分野が決まっている場合もありますので、その分野に沿うように論文を選びましょう。
また、直近のゼミで、すでに論文紹介されている論文を選ぶことも内容にしましょう。
周囲が興味を持ちそうな論文を選ぶ
周囲がどういった論文に興味を持つか考えてください。
・研究室のレベルアップになる論文
どういった論文が研究室のレベルアップに繋がるかといった視点で選べると良いと思います。学生や教官も時間をとって、自分の論文紹介を聞いてもらうわけなので、お互いのために有意義な時間にしたいものです。
・すぐに研究に役立つ論文
どういった論文が自分または自分以外の研究に役立つかといった視点で論文を選べると非常に良いです。
よくわからなかったら、最初は選んだ論文が面白いかどうか、先輩や教官に聞いてみると良いでしょう。
「これは面白いね」とか、「これは難しいんじゃない?」など、コメントが頂けるでしょう 。
「上記2点を意識して論文を選び抜く力」は、学生のうちだけでなく、企業に入ってからも活躍する力で、養っておいて損はないです。
できるだけここで、ストイックに悩んでおくと、後に財産になります。
発表内容をイメージして選ぶ
論文を選ぶ際に、ある程度、「どういった情報をつめこむ」か、「どのような順で発表する」か、「どういった引用文献情報チョイスするか」を考えながら選ぶと良いでしょう。
上記をイメージしながら選んだ方が効率良いですよね。
選んだ論文で上手に発表内容をイメージできなければ、他に最適なものがあるかもしれません。
論文の理解
最低3回は読む
まず論文は最低3回は読みましょう。
下記の5点は絶対に間違わず理解する必要があり、そのためには最低3回は読むことが望ましいかと考えています。
・論文で達成したこと(新規性)
・過去の研究結果との比較(今回報告論文の優位性)
・今回報告論文の実験手法
・今回報告論文の改善点
・今後の研究展望
ここを理解しないまま、スライドを作りこむと、焦点のずれた発表をしてしまうことになるでしょう。
そして炎上することでしょう。
この5点もイメージしながら論文を選べると良いです。
ここまでで述べたように、論文選びは複数のことを考え、発表のイメージを深めながら行うのが良いでしょう。
もちろん、「技術的に絶対に共有すべき論文」が見つかれば余計なことを考えずに、決めることができるのですが。
引用文献を読み込む
私が思うに、この点が、「最も面白く、他の人の論文発表と差がつけられる点」と考えています。
この引用文献読み込みでは、
・過去の研究結果との比較(今回報告論文の優位性)
について十分掘り下げるために実施します。
面白いと感じる発表は、「情報が点だけでなく線でつながっているもの」と考えています。
人は誰でもそうですが、一点のみの情報だけでなく、情報が何かと繋がりをもったときに、「理解が進み、面白いと感じる」ものです。
このために、引用文献を読み込みましょう。
私は「20~50報」分は引用文献を読み込むのがベストかと思います。
(もちろん面白さ以外にも、正確な発表をするためにも引用文献読み込みは必要かと思います)
20報読むのも最初はしんどかったりしますよね。
ただ専門用語の英単語になじめると、一気に読むスピードが上がります。
20報読むのもあまりに時間がかかりしんどいようだと、後の研究生活も中々大変になるので、意地でも読むようにするのがおすすめです。
スライド作り
ストーリーを決める
いきなりスライドを丁寧に作りこむのはやめましょう。
まずは紙などに、スライドにどういったことを話すのか書き記し、「発表スライドは何枚くらいで、一つ一つのスライドで言いたいこと」を整理しましょう。
「1スライドごとのメッセージ」を決めましょう。
ここで、大体の発表時間分量を予想し、もう一度スライド内容を整理しましょう。
最初からじっくりスライドを作ると、発表時間度外視、発表の繋がりめちゃくちゃ状態になり、結局作り直しになるか、グダグダな発表になってしまいます。
大事なのはストーリーです。
発表がスライドごとに繋がっているか、です。
1つ前のスライドと、1つ後のスライの繋がりにこだわって、微妙だな、と思うようであれば修正した方が良いです。
この繋がりがおかしいと発表がしづらくなります。
※これは何も論文発表だけに限った話ではありません。
ストーリーの重要性について、詳しくは下記をどうぞ。
強調点は色を使う
聴衆の理解を促進するために、効果的に色を使いましょう。使用する色は3色以内には絞り、使う色は統一するようにしましょう。
例えば、「良いことは青系の色で示し、悪いことは赤系の色で示す」などです。
色のルールを決めることで聴衆は色を見て発表のイメージがしやすくなります。
文字サイズは3パターンまでに抑える
あまり色々な文字サイズの文章が、一枚のスライドにあふれていると、非常に見づらくなります。3パターンまでに抑えるとすっきりして見やすくなります。
目に優しい配色(原色乱用は避ける)
これは、あまりこだわっている人はいないように感じますが、色を使う上で原色は避けた方が良いです。赤、とか、青、とか、黄色とかは目がちかちかして見づらいですし、原色を活用しているスライドデザインもあまり多くはないかと思います。
この辺りまで余裕をもってこだわれると、論文紹介も面白くなってきます。
(※あまり、デザインに凝りだすと本末転倒ですので、そこはほどほどにしましょう)
発表練習
スライドで言いたい内容を整理する
まずは「このスライドでは何が言いたいか」といったことを考えながら内容を整理しましょう。
いきなり発表練習をするとグダグダになってしまいます。
簡単にキーワードだけ頭に入れて、頭に発表スライドを馴染ませていくと良いでしょう。
あまりに発表がしづらい場合、前述した「スライドのストーリー」がちぐはぐになっている可能性があります。
見直しましょう。
発表練習をする
少なくとも5回以上は発表練習しましょう。
どんなに発表に慣れている人でも、練習をしていないと、「時間内に収まらない」だとか、「うまく伝わらない」といったようにグダグダになります。
5回は発表練習をすることが好ましいです。
重要な発表だと10回は練習すると良いですね。
また、この際に本番を想定して「身振り手振りもつけて実施」すると良いでしょう。
更に余裕があれば、
・自分の発表を録音する
・鏡を見ながら練習する
ここまで行うとより、効果的な練習になります。
論文紹介のメリット
論文紹介面倒くさい!と感じられるかもしれませんが、
これによって得られる物も多いかと思います。
私が感じる論文紹介の利点は下記です。
ポスター発表、学会発表にて有利
ポスター発表や学会発表においての地力がつきます。
ポスターで最優秀賞を受賞したことがあるのですが、これは論文紹介により修得した力に因るものだと感じています。
就活技術面接にて有利
情報整理・スライド作りこみ・発表スキルが身につくことで、就活の技術面接では大きなアドバンテージが得られます。
私は就活の面接は得意ではなかったのですが、技術面接だけは得意でした。
技術面接は10社以上受けて、1社だけしか落ちたことがないです(その落ちた技術面接も一番最初の面接で勝手がわからなかったものです)
(就活自体は下記のように大苦戦していましたが、技術面接だけは得意でした)
間違いなく論文紹介と技術面接は通じるものがあるかと思いますので、力を入れて損はしないかと思います。
論文読む力
言わずもがなですが、論文を理解する力が身につきます。
研究室を出た後でも役立つスキルですね。
情報整理・統合力
割愛しますが、これは生きていく上で、どんな職種についても役立つスキルです。
最後に
とはいえ、「論文紹介に時間をかける意味はあるのか?」といった疑問はあるかと思います。炎上しないように最小限労力で済ます方が良いかもしれません。
それに対する私のアンサーは、
「論文紹介に力を入れるべき」も「論文紹介に殆ど時間をかけない」も、どちらも正しく、その人が感じたようにやるべきでどちらでも良い
と考えています。(もちろん限度はありますが・・・)
「研究結果こそすべてで、論文紹介で培うスキルは、研究を通して身に着けるべき」といった考えもあるかと思いますし、それはそれで正しいかと思います。
ともかく、論文紹介は研究室によっては避けられない問題ですので、どうせやるのであれば、しっかり意義を持って取り組みましょう!
以上、【論文紹介】成功するために準備の仕方について、コツを紹介します!でした。
それでは終わります。
youtube始めました、良ければどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=RGzTmbhczKA
ピレンちゃんについて知りたい方は下記参照ください!
もし良ければtwitterもご覧ください!論文の紹介を行っています。
シクロペプチドの合成について。
— ピレンちゃん@研究職_化学 (@pyrene_chemist) 2020年3月28日
Clアニオンが配位することで、環状化合物の収率を向上できるとのこと。
イオン種により収率が左右されており、金属カチオンだけなどで、同様のことをするのは難しそう。
こういう反応改善メカニズムずばっと見つけられると爽快だろうなあ
https://t.co/zo5ay3fCpZ
今日も化学が大好きです!
ピレン