薄膜干渉

薄膜干渉

薄膜干渉は、薄膜の上下の界面で反射された光波が干渉し、特定の波長の反射光が強化または減少する現象。シャボン玉や水中の油膜に見られる多彩な色合いや、光学機器の反射防止膜に利用される。この現象の理論と応用について、数式を用いて詳しく解説する。

薄膜干渉の基本原理

薄膜干渉の基本的な考え方は、薄膜の上下の境界で反射した光波の干渉。光が薄膜に入射すると、上面で反射した光と下面で反射した光が干渉し、特定の波長の光が強化または減少する。膜の厚さが光の波長の整数倍や半整数倍になると、干渉の結果が異なる。

1. 光路差(OPD)

反射光の光路差(Optical Path Difference, OPD)は、干渉の程度を決定するために重要。光路差は膜の厚さと屈折率に依存する。光が膜を通過する際、上下の境界で反射された光の干渉を考えると、光路差は次のように計算される。

OPD=n2(dcosθ2)n1(2dtanθ2sinθ1)\text{OPD} = n_2 \left(\frac{d}{\cos \theta_2}\right) - n_1 \left(2d \tan \theta_2 \sin \theta_1\right)

ここで、

  • n1n_1 は上層の屈折率
  • n2n_2 は膜の屈折率
  • ddは膜の厚さ
  • θ1\theta_1θ2\theta_2 はそれぞれ入射角と膜内での光の角度

スネルの法則により、

n1sinθ1=n2sinθ2n_1 \sin \theta_1 = n_2 \sin \theta_2

これをOPDの式に代入すると、

OPD=n2(2dcosθ2)2dtanθ2n2sinθ2\text{OPD} = n_2 \left(\frac{2d}{\cos \theta_2}\right) - 2d \tan \theta_2 \cdot n_2 \sin \theta_2

最終的に、

OPD=2n2dcosθ2\text{OPD} = 2 n_2 d \cos \theta_2

2. 干渉条件

反射光が強め合うためには、光路差が光の波長の整数倍である必要がある。すなわち、

2n2dcosθ2=mλ2 n_2 d \cos \theta_2 = m \lambda

ここで、λ\lambdaは光の波長、mmは整数。反射光が弱め合うためには、光路差が光の波長の半整数倍である必要がある。

2n2dcosθ2=(m12)λ2 n_2 d \cos \theta_2 = \left(m - \frac{1}{2}\right) \lambda

3. 単色光と広帯域光

単色光が薄膜に入射すると、干渉パターンは明暗の帯として現れる。膜の厚さが異なると、強め合う干渉と弱め合う干渉が変わり、干渉縞が形成される。これがニュートンリングやその他の干渉パターンの形成につながる。

広帯域光(例えば白色光)が入射すると、膜の厚さに応じて様々な波長の光が干渉し、カラフルな帯状のパターンが見える。膜の異なる領域は、局所的な膜の厚さにより異なる色で現れるため。

薄膜干渉の応用

1. シャボン玉と油膜

シャボン玉や水上の油膜でも薄膜干渉が見られる。シャボン玉の薄膜は空気中にあり、屈折率 nfilmn_{\text{film}} が空気の屈折率よりも大きく、膜の厚さと光の波長によって干渉が起こる。干渉条件は次のように示される。

2nfilmdcosθ2=(m12)λ2 n_{\text{film}} d \cos \theta_2 = \left(m - \frac{1}{2}\right) \lambda

水上の油膜でも同様の干渉が見られるが、油と水の屈折率の違いにより、反射波の位相シフトが異なる。

2. 反射防止膜

光学系では反射防止膜が使用され、反射光を減少させて透過光を最大化するように設計されている。例えば、光学的厚さ dcoatingd_{\text{coating}}が入射光の1/4波長であり、屈折率が空気の屈折率より大きく、ガラスの屈折率より小さい場合、反射防止膜は次の条件を満たす。

2ncoatingdcosθ2=mλ2 n_{\text{coating}} d \cos \theta_2 = m \lambda

光が垂直に膜に入射する場合、反射光は完全に位相がずれて弱め合う干渉をするため、膜の厚さや屈折率を調整することで反射を抑えることができる。

まとめ

薄膜干渉は、薄膜の厚さと屈折率、光の波長に依存した干渉現象であり、反射防止膜や色彩効果などに応用されている。数式を用いることで、干渉の条件や膜の特性を定量的に理解し、様々な光学的特性を制御することができる。